インタビュー調査のまとめ方|
定性情報を整理・分析する手法とポイントを解説
消費者やユーザーに直接話を聞くインタビュー調査では、アンケート調査などの定量調査では把握しづらい様々な気づきや発見が得られます。調査結果は分析してレポートなどにまとめ、関係者と共有して次のアクションにつなげます。
今回は、インタビュー調査の結果のまとめ方や分析の手法、基本ポイントを解説します。
インタビュー調査のまとめ方
インタビュー調査のまとめ方には様々な方法がありますが、基本的には次のような手順で行います。
発言録を作成する
最初に、インタビューでの発言内容をまとめた発言録を作成します。インタビューの様子を記録した録画データや録音データを元に文字に書き起こす方法が一般的ですが、記録係(リライター)がインタビュー中に速記で作成する方法もあります。
書き起こした情報は、Excelなどで一覧表にまとめます。質問内容ごとに「誰が・どんな発言をしたか」がわかるように整理することが基本です。
発言量が多く冗長である場合は、発言の意図が損なわれない範囲で要約します。
情報を整理する
次に、発言録にまとめた情報を整理していきます。調査フローに沿って対象者ごとの発言内容を確認し、要点となる発言をグルーピングするなどして分類します。
情報分類時の観点・切り口の例を以下に挙げます。
- 感情や願望を表すワード
- 行動の変化
- 頻出するワード
- 複数人に共通する内容
- ポジティブな反応・ネガティブな反応
得られた示唆・気づきを抽出する
発言内容をひと通り整理したら、整理した情報間の関連性を分析し、示唆や気づきを抽出します。例えば、「忙しい」「手間がかかること」「時間があったらしたいこと」といった切り口でグルーピングした場合、そこから時短につながる商品やサービスのアイデアにつながることがあります。
異なる切り口で整理・分類した情報でも、共通点などを分析することで、施策のヒントや新たなコンセプトを見出しやすくなります。
レポートを作成する
最後に、整理・分析した情報をレポートにまとめます。レポートは「何のために、どのようなインタビュー調査を実施し、どのような示唆や気づきが得られたか」という観点でわかりやすく整理することが重要です。
レポートの形式に決まりなどはありませんが、一般的には次のような項目で構成します。
- 調査目的・調査方法などの概要
- 調査結果の要約
- 調査項目ごとの詳細な分析内容
- 発言録
インタビュー調査の分析に便利な手法
ここでは、インタビューで収集した定性情報の分析に役立つ手法を2つご紹介します。
KJ法
KJ法は、定性情報を効率よく整理する手法として知られています。収集した情報を付箋などのカードに一つずつ書き込み、関連性や共通性があるものをグルーピングして分類することで情報を整理していきます。
KJ法を用いれば、インタビュー調査の発言録を効率的に整理することができます。基本的な手順は以下の通りです。
- インタビューで得た情報を、一つずつ端的にカードに書き込む
- 類似する内容のカードをグルーピングし、見出しを付ける
- グループ間の関連性を分析し、類似性や因果関係などがわかるように配置を変える
- グループ間の相関関係がわかるように図解化し、文章などにまとめる
上位下位関係分析
上位下位関係分析は、定性情報を階層化することで対象者の本質的なニーズを導き出す手法です。
具体的には、下図のように3つの階層に整理していきます。
本質的なニーズ~になりたい ~になりたい、~な自分でありたい |
行為目標 本質的なニーズを満たすために「~がしたい」 |
事象 行為目標を達成するために「〇〇が欲しい」 |
付箋などのカードと、カードを3つの階層に仕分けるための模造紙などを用意し、以下のような手順で行います。
- 事象のカード化
インタビューで得た情報から、対象者の特徴的な行動やその背景などを切り出してカードに書き込む。 - グルーピング
類似したカードをグルーピングして一旦「事象」のエリアに貼り、「行為目標」に該当するものは二段目に配置する。このとき、関連性のあるグループを線で結ぶ。 - 上位化・ニーズの抽出
類似した「行為目標」のカードをグルーピングし、最上位の「本質的なニーズ」を導き出す。抽出したニーズを書いたカードを最上段に貼り、上位・下位の関係がわかる線を引く。
以下の記事では、上記以外の分析手法も紹介しているので参考にしてください。
【定性調査のまとめ方】レポート作成の基本手順と分析方法を解説
デプスインタビューのまとめ方と注意点|役立つ分析手法を解説
インタビュー調査をまとめる際のポイント
インタビュー調査の結果をまとめる際は、以下のポイントを意識しましょう。
調査目的・仮説に沿ってまとめる
グループインタビューやデプスインタビューの結果は、調査の目的や仮説に沿ってまとめることが基本です。
実際のインタビューでは話が脱線することがあるため、発言録には調査テーマとの関係性が低い情報が多数紛れていることがあります。重要性が低い情報もまとめようとすると、要点が不明瞭なレポートになってしまうため、本来の目的を主軸に構成することが大切です。
デブリーフィングの内容を参考にする
デブリーフィングは、インタビュー直後にモデレーターを含めた関係者で行うミーティングのことです。インタビューの内容を振り返りながら意見交換をし、要点や気づきなどを共有します。
デブリーフィングでは様々な意見や気づきなどが洗い出されるため、分析やレポート作成時の参考になります。特に重点的に話し合ったトピックや、共通認識が得られた事項を整理するとよいでしょう。
分析結果の妥当性をチェックする
インタビュー調査の分析は担当者によって変わることがあるため、他の担当者やチームで分析結果が妥当かどうかを確認・判断する必要があります。
チェック時の観点の例を以下に挙げます。
- 調査結果を導き出すプロセスに主観が入っていないか
- レポートは全体を通して論理的に展開されているか
- 主張を裏付ける根拠(発言内容など)はあるか
調査結果を効果的な商品・施策につなげるためにも、レポートの妥当性や信頼性を確認することは重要です。
視覚的にわかりやすくまとめる
レポートは、調査内容を把握していない相手にも伝わりやすい形式でまとめましょう。文章中心にまとめると理解に時間がかかることがあるため、対象者の行動プロセスや心理構造などは図やイメージ画像を用いてビジュアル化することをおすすめします。
視覚的にわかりやすいレポートを作成することで、調査結果に関する意見交換や次の施策に向けた話し合いをスムーズに進めやすくなります。
論理的でわかりやすいまとめ方をしよう
インタビュー調査の分析は、次の商品や施策につなげるための重要なプロセスです。不適切な分析やわかりづらいまとめ方をすると、インタビューで収集した情報が無駄になってしまう可能性もあります。ここで紹介した分析手法やポイントを参考に、膨大な定性情報を整理し、論理的でわかりやすいレポートを作成しましょう。