デプスインタビューのまとめ方と注意点|
役立つ分析手法を解説
1対1で行うデプスインタビューは、ユーザーのインサイトを抽出する定性調査の手法です。様々な発見がある一方で、数値で表せる定量調査とは違い、実施後のまとめ方やレポート作成が難しいという声も上がります。本記事では、デプスインタビューのまとめ方のポイントと注意点、代表的な分析手法を紹介します。
デプスインタビューのまとめ方
デプスインタビューのまとめ方に決まった形式はなく、調査の目的やテーマに合わせて最適な形を検討する必要があります。まとめ方の一例を6つのステップに分けて紹介します。
1.情報を整理する
まずはデプスインタビューで得た情報を整理し、Excelなどを用いて整理していきます。デプスインタビューの記録方法には、録画や議事録、インタビュー時のメモがあります。録画内容は文字に書き起こします。
通常、デプスインタビューは複数名に実施するケースが多くなります。情報を整理するときのポイントは、対象者ごとのトピックを一目でわかるようにすることです。
たとえば、以下のように項目を分けて一覧にすると、一目で把握しやすくなります。
質問項目 | 対象者① | 対象者② | 対象者③ |
---|---|---|---|
1-質問内容 |
|
・・・・・・ | ・・・・・・ |
2-質問内容 | ・・・・・・ | ・・・・・・ | ・・・・・・ |
3-質問内容 | ・・・・・・ | ・・・・・・ | ・・・・・・ |
一覧化するときは対象者の言葉を要約して記入します。このとき、できるだけ主観が入らないように意識しましょう。
2.グルーピングする
次に、調査目的・テーマに合わせて、気になる回答や反応をチェックしていきます。
高い頻度で出てくる言葉や共通した内容が出てくる場合、アイデアや発見のヒントとなるケースがあります。グルーピングする際は、印象・感情・行動・価値観などの観点でグループ分けしていくとスムーズです。
例を挙げると、「○○を購入したときに、どんな気持ちになったか」という質問に対して「高揚感」や「幸福感」がキーワードとして浮上する場合、これらをグルーピングします。また、「○○を購入して、生活に影響があったか」という質問に対して意識・行動の変化が見られる場合は、特徴ごとにグルーピングしていきます。
このように、対象者の言葉や反応を分類することで、定性情報を分析しやすくなります。
3.グループ同士の関連性を見つける
特徴ごとにグループ化したら、続いてグループ同士の関連性を見ていきます。たとえば、「家族と一緒に〜」「友人と一緒に〜」というグループがある場合、「誰かと一緒に行う」ことが共通点となり、商品コンセプトの糸口になることがあります。
グループ同士の共通点や相関性を見つけることで、個々の情報から一つのアイデアへとつなげやすくなります。
4.分析が妥当か確認する
定性調査の分析は、分析者によって大きく結果が変わる場合があります。分析の妥当性を担保するには、チーム体制で行う、ほかのリサーチャーの視点も入れるなどの工夫をするとよいでしょう。
また、デプスインタビューを2回に分けて妥当性を検証するやり方もあります。1回目の調査で得た情報から仮説を立て、2回目の調査で仮説が妥当かどうかを検証するという方法で、分析の妥当性を上げていくことができます。
5.気づき・発見を整理する
分析結果をもとに、デプスインタビューで得られた気づき・発見を整理します。印象・感情・行動・価値観などの観点から整理した個々の発見と関連性、そこから導き出されるアイデアをまとめます。
全体を見たときに論理性があるか、根拠に納得感があるかを確認しながら進めるのがポイントです。
6.レポートをまとめる
最後にレポートをまとめます。調査の目的や課題に応じて、わかりやすく整理しましょう。レポート形式の例を以下に挙げます。
- サマリー:冒頭に分析結果をまとめる
- レポート:調査で得られた気づき・発見を根拠となる情報とともに整理する
- 対象者の情報:対象者ごとの個票を入れる(プロフィール、回答内容など)
デプスインタビューをまとめるときの注意点
デプスインタビューの分析・まとめを進めるときの注意点を見ていきます。
目的・課題に合わせて整理する
デプスインタビューを実施する目的は様々で、主に下記のようなケースがあります。
- 商品のコンセプトを決めるにあたってインサイトを抽出したい
- 既存商品の改善にあたって仮説を得たい
- マーケティングや販売戦略の方向性を定めたい
- ペルソナやカスタマージャーニーを作成したい
調査目的によって、最終的にどのようなアウトプットをすべきか変わります。誰に向けたレポートなのか、何に活用するのかを念頭に置いて整理することが重要です。
多数意見がよいとは限らない
複数名にデプスインタビューを行うと、多数意見が優勢と捉えがちです。とくに分析の場面では、意見が多いほど有力な情報に見えてしまうことがあります。
しかし、デプスインタビューの本来の目的は、それぞれの体験や行動、多様な意見・価値観の中から、潜在的なニーズやインサイトを発見することです。意見が多い・少ないではなく、本質的なところに目を向けることを忘れないようにしましょう。
デプスインタビューの分析に役立つ手法
デプスインタビューの分析を行う際に役立つ手法を紹介します。
KJ法
定性調査の分析によく用いられるのがKJ法です。情報を分類して体系的に整理し、アイデアをまとめる方法です。通常は、数名体制で意見を交わしながら進めます。
次のプロセスで展開していきます。
情報をカードにまとめる
インタビューで得た情報をカードに書いていきます。1枚につき1つの情報となるよう注意しましょう。抽象的な表現は避け、できるだけ簡潔にまとめるのがポイントです。カードに書き出したら、ホワイトボードや壁に貼り付けていきます。
カードの内容をグルーピングする
類似する内容のカードをグルーピングし、それぞれのグループの特徴を表す名前を付けます。似ていないものは無理にグループ化せず、1枚のままにしておきます。
グループを体系的に整理する
次にグループ同士の関連性を見ていきます。共通点や相関性があるもの、因果関係、対立関係、順番などを考えながら、グループの配置を換えたり矢印を使ったりして、視覚的に関連性がわかるように並び替えます。
アイデアをまとめる
最後は、体系的に並び替えたカードを見ながらアイデアをまとめていく作業です。それぞれの関連性から導き出されることを文章化します。視点が偏らないよう、参加者と議論しながら進めることがポイントです。
KA法
KA法は、ユーザーの価値観に着目した分析手法です。動機と行動、その結果を見ながら根底にある価値観を抽出する方法で、デプスインタビューの分析にも多く取り入れられています。
次のように進めていきます。
インタビューの情報をテキスト化
デプスインタビューで得た情報を簡潔に要約して、テキストに落とし込みます。
KAカードを埋める
KAカードは、次の項目で構成されます。
出来事 (インタビューで得た情報から出来事を書き出す/動機・行動・結果) |
|
---|---|
ユーザーの心の声 (行動や発言から心の声を抽出する) |
価値観 (出来事と心の声の背景にある価値観を抽出する) |
できるだけ簡潔にわかりやすくまとめながら、KAカードを埋めていきます。
KAカードをグルーピング
次にKAカードを類似する価値観でグルーピングし、特徴を表す名前を付けます。
細かく分類しすぎると分析が複雑になるため、大きな特徴で括るようにしましょう。いくつかの価値観のグループができることで、アイデアのヒントを得たり、ペルソナ像の作成に役立てたりできます。
アフターコーディング
アフターコーディングは、類似する回答を分類し、定性情報を定量的に分析できるようにする手法です。デプスインタビューの分析に活用できるほか、アンケート調査の自由記述を分析する際にも用いられています。
次のステップで進めます。
インタビューの情報をテキスト化
インタビューで得た情報を要約して、テキスト化します。分析しやすいように、Excelなどにまとめます。
グルーピングして分類コードを振る
類似した内容ごとにグループ化し、それぞれのグループにコードを振ります。分類コードを振ることで、回答内容ごとの人数や割合などを定量的に分析できるようになります。ポジティブ・ネガティブの割合を見たい場合や、クラスター(似ている集団)ごとの傾向をつかみたいときに便利な手法です。
調査目的に応じて最適な形を考えることが大切
デプスインタビューは、1対1の対話を通じて深層心理やインサイトを抽出できる調査手法です。分析やまとめ方に決まった形式がないため、調査目的に応じて最適な形を検討することが大切です。ここで紹介したポイントを参考に、新たな発見につながる分析・レポートにつなげてください。