グループインタビューのやり方|
調査の進め方やインタビューのコツを解説
グループインタビューでは一度に複数人の意見を収集できるため、実務に取り入れたい人も多いでしょう。しかし、グループインタビューを適切に実施するには、企画から実査、分析までの基本的なやり方を押さえておく必要があります。今回は、グループインタビューの進め方や円滑に進めるポイントを解説します。
グループインタビューはどんな調査?
グループインタビューの進め方について見ていく前に、まずは調査の概要を押さえておきましょう。
モデレーターが進行する座談会形式の調査
グループインタビューは、調査対象者を複数のグループに分けて座談会形式でインタビューを行う手法です。1グループあたり4~8名程度で構成し、モデレーターと呼ばれる司会者が調査内容に沿って各グループのインタビューを進行していきます。
一般的に、グループインタビューは円形テーブルやマジックミラーが設置された専用ルームで行い、モデレーター以外の関係者は隣のバックルームからミラー越しに観察します。
インタビュー時間は1グループ90~120分程度です。参加者への謝礼は調査内容や拘束時間などで変わりますが、120分8,000円が一つの目安です。
オンラインインタビューも増えている
通信技術の向上やビデオ通話アプリ(ZoomやGoogle Meet等)の普及に伴い、近年はオンラインでのグループインタビューも増えています。パソコン(スマートフォン)とインターネット環境があれば参加できるため、遠方の人など調査会場に出向くことができない人にもインタビューを実施できます。
参加者にとっては、会場まで移動する手間・時間を省くことができ、自宅から気軽に参加できるなどのメリットがあります。オフライン(対面)でのグループインタビューと比べると、参加者同士の相乗効果による活発な意見交換が起こりにくいですが、感染症対策などの観点でもメリットがある手法です。
グループインタビューについては以下の記事も参考にしてください。
グループインタビューの進め方
基本的に、グループインタビューは以下の手順に沿って準備・実施します。
調査企画
まず、自社のマーケティング課題やグループインタビューを行う目的を整理し、調査のアウトラインを設計します。企画の段階で以下の点を明確にしておきましょう。
- インタビューのテーマ・調査内容
- インタビューを通して明らかにしたいこと
- グループの分け方・グループ数・1グループあたりの人数
調査会社等に依頼する場合は、リサーチャーやモデレーターと課題・目的をしっかりと共有しておくことが重要です。
対象者のスクリーニング
調査の骨格が決まったら、企画内容に沿って調査パネルやモニタなどから対象者を選定します。対象者はWebによるスクリーニング調査で絞り込むのが一般的です。スクリーニング調査は本調査の前に行う事前調査のことで、調査の対象条件(年齢・性別・家族構成・ライフスタイルなど)に合致する人を選定するために行います。
インタビュールームの手配
対象者のスクリーニングと並行してインタビュー会場の準備を進めます。調査会社等が保有するインタビュールームには様々なタイプがあるので、インタビューの内容・規模に適した会場を確保しましょう。調査関係者が別の場所にいる場合は、発言の様子を撮影・中継してもらえるところもあります。
オンラインインタビューの場合は適切なビデオ通話アプリを選定し、参加者のPC環境やインターネット環境を確認しておきます。
インタビューフローの作成
調査内容に沿ってインタビューフローを作成します。インタビューフローは質問の内容や順番、時間配分などをまとめた手順書のことで、モデレーターはフローに従ってインタビューを進行します。全体の流れや質問の優先順位を決める重要な資料なので、モデレーターの意見も聞きながら作成すると良いでしょう。
グループインタビューでは、参加者同士で話し合いが盛り上がり、フロー通りに進まない場合があります。それにより残り時間が少なくなってしまった場合でも、質問の優先順位が明確であれば、モデレーターが状況に応じて柔軟に対応することができます。
インタビューの実施
一般的なグループインタビューは休憩を挟みながら1日に2~3グループ行い、グループ数が多い場合は2~3日に分けて実施します。モデレーター以外の関係者はバックルーム等でインタビューの様子を観察し、ポイントとなる発言や気づきをメモしておきます。
インタビューが終わったら、モデレーターを含めた関係者で簡単な振り返りと意見交換を行います。これをデブリーフィングと言います。基本的にデブリーフィングは1グループごとに行い、インタビュー結果の要点を共有します。インタビューフローや質問で追加・変更したいことがあれば、次のグループのインタビューから反映できるか相談します。
分析・レポートの作成
すべてのインタビューが終わったら、参加者の発言内容を一覧にまとめた発言録を作成します。発言録は、記録者(リライター)がインタビュー中にリアルタイムで作成する場合や、インタビュー後に録音データを元に作成する場合があります。
そして、発言録やデブリーフィングの内容を元に分析を行い、レポートを作成します。各グループの特性や調査課題に対する検証結果、得られた知見・アイデアなどを整理してわかりやすくまとめましょう。
調査会社に依頼した場合は、発言録や報告書が納品されます。
グループインタビューを円滑に進めるポイント
最後に、グループインタビューをスムーズに進めるコツをご紹介します。限られた時間で様々な意見を収集するために、以下の2点を意識しましょう。
話しやすい雰囲気を作る
グループインタビューで何より大事なのは、話しやすい環境を整えることです。人によっては緊張して口が重くなってしまうことがあるので、リラックスして発言できる雰囲気を作りましょう。
例えば、インタビューはいきなり本題に入らず、「最近寒くなりましたね」「皆さん、会場まで迷わず来られましたか?」など気軽な話題からスタートすると、場が和みやすくなります。また、参加者は初対面同士なので、一人ずつ簡単な自己紹介を行うことも大切なポイントです。
インタビューの冒頭で緊張をほぐしておけば、リラックスした状態で本題に入ることができ、気兼ねなく発言してもらえるようになります。
グループダイナミクスを後押しする
グループインタビューでは、お互いの意見に触発されて相乗効果(グループダイナミクス)が生まれ、意見交換が活発になることがよくあります。話が盛り上がってくると、思わぬ本音が聞けたり、想定外の意見やアイデアを収集できたりすることも。そのため、モデレーターはグループダイナミクスを後押ししながらインタビューを進めることが重要です。
論点がずれてきたら軌道修正する必要がありますが、インタビューにおいて重要度が高いトピックであれば、時間配分通りに進めるために話をさえぎる必要はありません。
また、特定の参加者の発言量が多くなってきた場合は、要所要所で他の人にも話を向け、まんべんなく発言してもらうようにコントロールします。
適切な段取りでグループインタビューを実施しよう
グループインタビューの段取りは難しいイメージがあるかもしれませんが、企画・インタビューフローの作成・実査・分析といった基本的な流れはアンケート調査と同じです。ただし、対象者のスクリーニングやインタビュールームの手配などグループインタビューならではの段取りもあるため、それらを踏まえて準備を進める必要があります。自社での準備・実施が難しい場合は、グループインタビューを得意とする調査会社等に委託しましょう。