ユーザーインタビューのやり方|
5つの手順と実施時のコツをわかりやすく解説
ユーザーインタビューは、ユーザーの潜在的な課題やニーズとその背景にある期待・価値観などを把握できる定性調査です。しかし、いざ実施するとなると「やり方がよくわからない」というケースが少なくありません。
本記事ではユーザーインタビューの基本的な手順と実施時に押さえておきたいコツをわかりやすく説明します。
ユーザーインタビューを実施する方法
ユーザーインタビューを行う方法には、自社で実施する場合と調査会社に依頼する場合の2つがあります。それぞれの内容と費用の相場について見ていきましょう。
自社で実施
ユーザーインタビューの企画・設計から対象ユーザーのリクルーティング、インタビュー実施まで自社で行うという方法です。対象ユーザーを募集する方法には、以下のものがあります。
ユーザーインタビューサービスを利用する
プラットフォーム上でインタビューするユーザーを募集できるマッチングサービスと、対象ユーザーの選定からインタビューまでスピーディに実施できるチャットインタビューサービスがあります。
自社の顧客にアポイントをとる
自社の顧客から対象ユーザーを選定してアポイントをとる方法です。また、社員や知人から紹介してもらう、SNSで募集内容を告知して集めるという方法もあります。
アンケート回答者から選定する
事前にアンケートを実施して、回答者の中からインタビュー調査の要件に当てはまる人に協力をお願いします。
クラウドソーシングを利用する
クラウドソーシングのプラットフォーム上で、インタビューを受けてくれる人を募集するという方法です。
インタビューの謝礼はテーマや時間によって変わりますが、60分あたり8,000円から1万2,000円が相場です。
ユーザーインタビューサービスの場合は、調査回数や調査人数によって変動するプランや月額制が多くなっています。チャットインタビューサービス『Sprint』は回数制限がない定額プランを提供していて、月額19万8,000円から利用できます。年間を通して、数多くのユーザーインタビューを実施する場合に便利なサービスです。
調査会社に依頼
調査会社では、調査設計から対象ユーザーのリクルーティング、モデレーターの手配、インタビューの実施、分析・レポーティングまで提供しています。
費用は依頼する内容によって変わりますが、ユーザーインタビュー5〜6名で20万円以上が基本料金の相場です。ただし、実際にはここにオプションを追加していくことになるため、そのぶんのコストが加算されるケースが多くなっています。
調査会社に依頼するメリットは、専門的なノウハウを活かした精度の高いユーザーインタビューを実施できること、また、自社の手間を削減できる点が挙げられます。一方でコストが高いこと、打ち合わせから実施まで期間を要することがデメリットです。
ユーザーインタビューのやり方・5つの手順
ユーザーインタビューのやり方を5つの手順に分けて見ていきます。
1.目的を明確化
まずはユーザーインタビューを行う目的を明確にします。このステップをしっかり行わないまま進めると、求めている情報を得られなくなってしまうため注意しましょう。
目的設定では、以下の3点を明確にして言語化しておきましょう。
- 課題とゴール設定:現状どのような課題があり、何を実現するために実施するのか
- 検証すること:ユーザーインタビューによって何を明らかにするのか
- 調査結果の活用:ユーザーインタビューで得た情報を何に活用するのか
2.対象者の要件を決めてリクルーティング
次に、対象ユーザーの要件を決めてリクルーティングします。要件を決めるときは、「知りたい情報を持っているのは、どんな人か」という観点から具体的にしていくとよいでしょう。
年齢・性別・居住地・家族構成といった属性情報だけでなく、たとえば「○○を利用している人」「○○の行動をとった経験がある人」というように具体的にすることで、有益な情報を得やすくなります。
3.質問項目の設計
ユーザーインタビューの質問項目を設計します。調査目的である「何を明らかにするのか」を念頭に置いて、どのような質問をすれば求める答えを引き出せるのかを考えていきます。
以下に、質問項目の例を紹介します。
例)○○購入の意思決定プロセスを確認する
- 購入前のイメージ・知識:「購入前、○○に対してどんなイメージを持っていたか」
- 購入の動機・期待:「○○を購入することで、どんな状態を期待したか」
- 情報収集や比較検討の方法:「参考にした情報は何か」
- 購入後の感想・感情:「購入後に、どんな気持ちになったか」
当日のインタビューをスムーズに進行できるよう、質問項目・聞く順番・各質問の時間配分をシートにまとめておきましょう。
4.インタビュー実施
ユーザーインタビューの実施形態は、ビデオ会議ツールを使ってオンラインで行う方法と、会場を用意して対面で行うオフラインの方法があります。
オンラインのメリットは、場所の制約を受けないため国内外から広く対象ユーザーを集められることです。また、交通費や移動の手間を削減できるという利点もあります。オフラインで実施するメリットは、ユーザーの反応を直接確認できるため、表情や仕草などの非言語情報も把握しやすい点が挙げられます。
いずれの場合も、インタビュー内容を記録する録画や録音の準備をして臨みます。気になった点をメモできるように筆記用具も用意しておきましょう。
5.分析
インタビューが終了したら分析します。分析方法に決まった形はありませんが、参考例として基本となる手順を紹介します。
①音声データを文字起こしする
②情報を整理する
インタビューで得た情報をシートに整理して、可視化できる状態にします。次の2つのシートを作成しておくと、レポーティングする際にも便利です。
● 個票:ユーザーのプロフィールと特徴的なコメントを個票としてまとめる
● 一覧表:特徴的なコメントを「質問項目×ユーザーごとのコメント」の一覧表にまとめる
③ファインディング(気づき・発見)をまとめる
整理した情報から「どのような気づき・発見があったのか」「どんな点が重要といえるのか」を整理してまとめます。
6.レポート
レポートは何に活用するのかを意識した上で、わかりやすくまとめます。以下の構成例を参考にしてください。
- サマリー:調査目的に対する分析結果の要約
- レポート:調査で得られたファインディングとその根拠となるコメント
- 考察・提言:分析結果からの考察や提言、今後検討すべき事項など
- 添付:ユーザーごとの個票や一覧表
ユーザーインタビュー時のコツ
ユーザーインタビューでは、できるだけバイアスを排除できるように進めることが重要になります。押さえておきたいコツを紹介します。
回答を誘導する聞き方をしない
ユーザーインタビューを進める中で、無意識のうちに回答を誘導する対応をしてしまうことがあります。たとえば、以下のようなケースをやってしまいがちです。
- 対象者が返答に迷っているときに、つい答えを誘導してしまう
- 「要するに、こうですか?」と結論づける
- 「いいですね」など対象者の意見を評価する
こうした対応は、対象者の心理にバイアスをかけてしまうため注意しましょう。
「なぜ?」という聞き方は避ける
インタビューをしていると「なぜ?」と聞きたくなりがちですが、「なぜ、そうしたのか?」という聞き方を繰り返すと、ユーザーは圧迫感を覚えることがあるため注意が必要です。また、「なぜ?」と聞かれると正解を探そうという心理が働きやすくなり、本質的な話を引き出せなくなることがあります。
次のように言い換えるなど、聞き方を工夫しましょう。
例)「なぜ、これを選んだのですか?」
→「これを選んだときに、どんなことを期待しましたか?」
理由ではなくストーリーを聞く
人が普段の生活で何かを選んだり行動したりするときに、常にその理由が理路整然としているわけではありません。そのため、ユーザーに理由を聞いても、求める答えが見つかるとは限りません。
課題・ニーズを探り当てたいときは、過去の出来事や経験・行動、そのときの考えや感情といった個々のユーザーのストーリーに耳を傾けることがポイントです。そこから多様な価値観やインサイトを発見することにつながります。
基本の流れとコツを押さえて、より良いユーザーインタビューを実現しよう
ユーザーインタビューは、定量調査では見えてこないユーザーの実態やインサイトを探る上で有効な調査方法です。基本的な流れと実施時のコツを押さえておくことで、プロダクトやマーケティングに役立つ貴重な情報を得ることができます。ぜひ本記事を参考に、より良いユーザーインタビューを実現してください。