商品開発のためのインタビュー調査とは|
調査の種類と進め方のポイント
商品開発では、市場ニーズやターゲットの理解をはじめ、コンセプト企画や4P(Product・Price・Promotion・Place)の策定など様々なプロセスが必要となります。市場に受け入れられる商品を開発するにあたって役立つのがインタビュー調査です。
本記事では、商品開発への活用場面を紹介するとともに、インタビュー調査の進め方とコツを解説します。
商品開発にインタビュー調査が役立つ場面とは
インタビュー調査は、対象者へのインタビューを通じて、詳細な行動実態やその背景にある動機・価値観・感情などを明らかにする手法です。商品開発の様々な場面に役立ちます。
市場ニーズやターゲットへの理解を深める
商品の企画段階で重要となるのが、市場ニーズとターゲットについての理解です。どんなに優れた機能を備えた商品であっても、市場ニーズにマッチしていなければ購入につながりません。インタビュー調査を通じてターゲット層のライフスタイルや行動実態、その背景にある悩み・期待などを詳細に把握することで、ユーザー側の視点に立った商品開発を行うことができます。
また、インタビュー調査はペルソナやカスタマージャーニーマップを作成する際の情報ソースとしても活用されています。
仮説の精度を高める
商品開発では「誰の・どのような悩みを・どう解決するか」を明確にして、コンセプトを決める必要があります。そのための仮説を立てられない、または仮説を検証したいという場合にもインタビュー調査が役立ちます。
アイデアのヒントを得る
インタビュー調査では、これまで自社が認識していなかった新たな課題が見つかることがあります。アイデアの糸口となる情報を得られれば、他社にはないソリューションを提案できるなど新たな市場創造につながることが期待できます。
コンセプトを検証する
商品のコンセプトが市場に受け入れられるか、ターゲット層のニーズに合致しているかを調査します。開発において重点的に検討すべきポイントを明確にすることで、競争力を持った商品へとつなげることができます。
また、広告のコンセプトを決める際にもインタビュー調査が役立ちます。クリエイティブのイメージを複数案提示して、対象者の反応を見るという方法を用います。商品の企画段階にコンセプト検証のステップを取り入れることで、リリースしたものの反響が今一つという事態を避けることができます。
パッケージやネーミングへの反応を確認する
どのようなパッケージやネーミングがターゲット層に好まれるかを調べます。複数案を提示して、対象者の意見や反応を見るという方法です。また、それぞれのパッケージやネーミングから受けるイメージを聞き出すことで、マーケティングやブランド戦略に活かすこともできます。
競合商品との比較
自社商品と競合商品の評価の違いをヒアリングすることで、自社商品の強み・弱みや競争力を把握することができます。4P(Product・Price・Promotion・Place)を策定する際の情報源としても役立ちます。
具体的には、商品を実際に手に取ってもらい使用感を比較してもらう、商品に対するイメージや利用シーンの違いをヒアリングするなどの方法があります。競合商品よりも優位性があるのはどのような点か、改良すべきことは何か、競合商品からの切り替えが可能かなどを検証することができます。
インタビュー調査の種類と特徴
インタビュー調査には、対象者1名に対して行うデプスインタビューと、複数名の対象者を集めて行うグループインタビューとがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
デプスインタビュー
デプスインタビューとは、対象者とモデレーターが1対1の対話形式で進める調査手法です。商品の認知から購買に至るまでの意思決定プロセスを詳細につかめるほか、その背景にある悩み・期待・感情・価値観などを深く掘り下げることで、潜在ニーズやインサイトの発掘ができます。
商品開発においてデプスインタビューが有効なのは、次のような場面です。
- ターゲットのライフスタイルや意思決定プロセスを明らかにしたい
- 課題設定における仮説を立てたい・検証したい
- ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成したい
- 商品開発のアイデアを得たい
- 商品や広告のコンセプトを検証したい
- パッケージやネーミングに対する反応を確認したい
- 競合商品との比較をしたい(イメージ・評価・利用シーンなど)
グループインタビュー
グループインタビューとは、属性(年齢・性別・家族構成・職業など)や特性(ライフスタイル・興味・商品の利用経験など)における共通点がある対象者を集めて行う調査手法です。一般に4〜8名程度を1グループとして、モデレーターは進行役を務めます。
グループインタビューは、他の参加者から刺激を受けて活発な意見が飛び交うグループダイナミクス効果が期待され、多様な意見や多くのアイデアを集めたい場合に適しています。主に次のような場面で実施されています。
- 商品開発のアイデアを得たい
- 商品や広告のコンセプトを検証したい
- パッケージやネーミングに対する反応を確認したい
- 競合商品との比較をしたい(イメージ・評価・利用シーンなど)
商品開発に活かすインタビュー調査の進め方とコツ
インタビュー調査は、大きく次の6ステップで進めていきます。商品開発に役立てる上で留意すべきポイントとともに見ていきましょう。
1.調査目的の明確化
商品開発では、市場やターゲットの理解やコンセプト決定に始まり、パッケージ・ネーミングの策定、発売開始後の競合比較など、各プロセスにおいてインタビュー調査が有効です。
まずは以下の点を具体的にすることからスタートします。
「どのような背景や課題があって調査を実施するのか」
「調査によって何を明らかにするのか」
「調査結果をどのように活用するのか」
調査目的が明確になることで、期待した成果を得られるインタビュー調査が可能になります。
2.調査設計
調査設計では、次の項目を明確に決めていきます。
- 調査の種類(デプスインタビューまたはグループインタビュー)
- 実施形態(オフライン・オンライン・チャットインタビュー)
※オフラインの場合は会場の手配も必要 - 全体スケジュール(準備~インタビュー実施期間~分析・レポート)
- 調査対象者の人数
- インタビュー時間
- 予算
インタビュー調査は準備から実施、分析・レポートまで一定の期間が必要となるため、商品開発に活用する上では、あらかじめ計画を立てて進めることが重要です。
3.インタビューフローを作成
インタビューフローとは、インタビュー当日の進行をまとめた台本のことです。質問項目と時間配分、質問する順番、確認すべき事項などを整理しておきます。
ただし、インタビュー調査では、対象者の意見や反応に合わせて臨機応変に質問を変えていくことが重要になります。インタビューフローを作成する際に質問項目を細かく決めてしまうと、一問一答形式のようになってしまい、表層的な情報しか集められないという失敗をしがちです。
この段階では、必ず聞くことを決めておくなど質問の優先順位がわかるようにしておくとよいでしょう。
4.対象者をリクルート
調査目的に応じて対象者の要件を定め、リクルーティングをします。調査対象として適している属性・プロフィールであるか、調査テーマについてしっかり話せる人かどうかの2点から要件を絞り込んでいきます。
とくに商品開発の場合は、ライフスタイルや調査テーマにおける興味関心の度合い、利用経験などをしっかり確認して選出することが失敗を避けるポイントです。
5.インタビュー実施
インタビュー調査で重要となるのは、対象者がリラックスして本音を話してくれる状態を作ることです。
対象者は自分が間違ったことを言ってしまわないか不安になっていることが少なくありません。インタビューを始める前に、正解・不正解はないことや思っていることを自由に発言してよいことを伝えるなど、対象者が安心して話せるように配慮しましょう。
6.分析・レポート
インタビューが終わったら、分析・レポートをまとめます。基本的な手順は、インタビューの音声データから文字起こしを行い、対象者の発言・反応とファインディング(気づき・発見)を整理するという流れです。
意思決定プロセスに大きく影響している経験や価値観を導き出す、重要なキーワードをピックアップするなど、調査目的に合わせて整理するのがポイントです。
開発者側の視点からユーザー視点へ
商品開発では、市場やターゲットについての理解や課題解決のためのアイデア出し、パッケージ・ネーミング、広告クリエイティブなど様々なタイミング・場面においてユーザーの実態をしっかり把握することが求められます。
インタビュー調査には、ともすると開発者側の視点で考えがちになってしまうところを「ユーザー視点」へと引き戻してくれるメリットもあります。市場に受け入れられる商品を開発する上で、インタビュー調査を有効活用してみてはいかがでしょうか。