商品企画に役立つ調査とは|
調査の種類と分析の方法

30 May.2022 / 商品企画・開発

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商品企画では市場動向やニーズの把握をはじめ、コンセプト設計、価格設定、プロモーション施策などを検討するにあたって様々な調査が必要となります。

本記事では、商品企画に役立つ調査にはどのような種類があるのか、また、分析手法を定量調査・定性調査に分けて見ていきます。

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消費者のホンネ、すなわち”インサイト”を探るためのインタビュー実例を、活用シーン別・業種別に9種類ご紹介します。

商品企画に役立つ調査とは

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商品企画のプロセスは、一般に次のような流れになっています。

  • 市場の可能性や機会を確認
  • コンセプト設計
  • 4P(Product・Price・Place・Promotion)の策定
  • リリース後のモニタリング・改善

これらの各プロセスで、消費者の実態やインサイトをつかむための定量調査・定性調査が重要となります。まずは調査の種類と特徴を見ていきましょう。

定量調査の種類

定量調査とは、数値化できるようにデータを収集する調査手法のことです。統計学的な分析が可能になるため、全体の傾向や割合などを量的に検証したい場合に活用されています。

定量調査の主な手法として、次のものがあります。

アンケート調査

定量調査の中でも手軽に実施でき、多く活用されているものがアンケート調査です。多くのサンプルが必要となる場合に適しており、商品企画においては以下のような場面に役立てることができます。

  • 商品ジャンルにおける市場の可能性を確認したい
  • どのような層が購入しているのか確認したい
  • どのようなニーズがあるのか確認したい
  • 競合他社の状況を確認したい

ホームユーステスト(HUT)

ホームユーステストとは、一定の期間、対象者の自宅で商品を試用してもらい、使用感や評価などをアンケートで回答してもらう調査方法です。次のような場合に適しています。

  • 上市前に商品への評価を確認したい
  • 使用感や機能性への評価を確認して改善したい

ただし、試作品など市場に出回る前の調査を行う場合、情報漏えいが発生しないように留意する必要があります。

会場調査(CLT)

会場調査とは、対象者を会場に集めて行う調査のことです。商品企画では、次のような場面に役立てることができます。

  • 試作品を手に取ってもらい感想や意見を収集する
  • 広告表現の評価を確認したい
  • ネーミング・パッケージの印象を確認したい
  • 実際の売り場を再現し、有効な商品陳列の方法を確認したい

会場調査は、実際に触ってもらったり見てもらったりした際の評価を知りたい場合に適している調査手法です。消費者のリアルな反応を確認できるというメリットがあります。

定性調査の種類

定性調査とは、対象者の言葉や表情、反応などから定量的に把握できない情報を集める調査手法のことです。インサイトを発掘したい場合や、より詳細な行動実態を明らかにしたい場合に用いられます。

デプスインタビュー

デプスインタビューは、対象者とモデレーターが1対1の対話形式で行う調査です。デプス(深さ・奥行き)の言葉の通り、意思決定プロセスの詳細とその背景にある要因、深層心理を掘り下げていくことができます。

商品企画においては、次のような場面で有効です。

  • より細かな行動実態を把握したい
  • インサイトを発掘したい
  • 商品企画のアイデアを得たい
  • ペルソナやカスタマージャーニーマップの精度を高めたい

デプスインタビューは、1人につき60〜90分程度の時間を設定するのが一般的です。じっくり話を聞き出すことができるため、定量調査では得られない詳細な情報を集めることができます。

グループインタビュー

グループインタビューは、4〜8名程度の対象者を集めてテーマについて自由に発言してもらう調査方法です。次のような情報を得たい場合に適しています。

  • 商品の利用実態や評価を知りたい
  • 広告物の印象や評価を知りたい
  • 商品企画のアイデアを得たい

グループインタビューでは、参加者同士で刺激を受け合うことで活発な意見が出されるグループダイナミクスの効果が期待されます。ただし、逆に意見の同調やけん制が起きて、情報にバイアスがかかってしまうリスクもあるため、モデレーターがしっかり進行することが重要になります。

エスノグラフィ調査

エスノグラフィ調査は、行動観察によって情報を集める調査手法のことです。

対象者自身が自覚していない課題や無意識のうちに取っている行動は、インタビューをしても把握することができません。そのため、顕在化していないニーズや価値観を特定したい場合に、この調査手法が用いられます。

  • 商品のベネフィット(便益)を確認したい
  • ライフスタイルにおける価値観を知りたい
  • リアルな生活実態を把握したい

エスノグラフィ調査では、定量調査やデプスインタビューなどの定性調査と組み合わせることで、より深い洞察を得ることができます。

商品企画における定量調査の分析~ポイントと注意点

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定量調査で得たデータは、統計学的な分析が可能です。ここでは、商品企画に役立つ代表的な分析手法を紹介します。

コレスポンデンス分析

コレスポンデンス分析とは、データを散布図の形にして視覚的にわかりやすくする分析手法のことです。様々なデータに適用できますが、商品企画では以下のような場面で多く用いられています。

  • 自社商品にどのようなイメージを持たれているかを可視化したい
  • 競合商品と自社商品のイメージやベネフィットの違いを明らかにしたい

コレスポンデンス分析でポイントとなるのは、縦軸・横軸にどのような項目を置くかという点です。商品企画の場合は、機能性や使用感、デザインイメージ、利用目的などが考えられるでしょう。データからどのような考察を得たいのかを明確にした上で、検討することが必要です。

クラスター分析

クラスターとは、似ているもの同士の集まりのことをいいます。クラスター分析では、データの中から類似する傾向があるものをグルーピングします。

商品企画では、次のような場面でクラスター分析が役立ちます。

  • ターゲット層をセグメントしたい
  • 市場における商品のポジショニングを明らかにしたい
  • 商品のイメージをカテゴライズしたい

クラスター分析を行う際のポイントは、どのような基準で「似ている」と定義するのかという点です。変数同士の相関から「近さ」を定量的に測定する方法が一般的ですが、どうグルーピングするかは分析者の主観が入り込む余地があるため、客観的データとしては適していない点に留意する必要があります。

価格感度分析(PSM分析)

価格感度分析(PSM分析)は、商品の適正価格を導き出すための分析手法です。具体的には、いくらぐらいから「高すぎて買えない」「高いと感じる」「安いと感じる」「安すぎて不安になる」といった最低価格・最高価格・妥当価格・理想価格についてのアンケート調査を行い、4つの交点から市場で受け入れられる価格帯を分析します。

PSM分析は、次のような場面で役立ちます。

  • 新商品に対する消費者の価格感度を確認したい
  • 既存商品のプライシングを見直したい
  • 地域による価格感度の違いを確認したい

ただし、PSM分析はあくまでも消費者からの回答をもとに最適な価格を分析するものになります。分析結果をもとに価格を設定したとしても、必ずしも購入につながるとは限らない点に注意が必要です。

価格による購入率を確かめたい場合は、どの価格帯であれば商品を購入したいと思うのかを調べるCVM分析を合わせて検討するとよいでしょう。

顧客満足度の分析

商品をリリースした後は顧客満足度調査を行い、改善に役立てていきます。顧客満足度の分析では、全体的な評価と部分的な評価のそれぞれに着目することがポイントです。全体評価にもっとも影響する項目を特定することで、自社の強み・弱みを客観的に把握することができます。

商品企画における定性調査の分析~ポイントと注意点

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定性調査は、定量的に測れない情報を集める手法です。分析において決まった形式はなく、目的に応じて最適な分析方法を検討することが必要です。ここでは、分析を進めるときの考え方を参考例として紹介します。

意思決定プロセスの心理的な背景

定性調査では、消費者の意思決定プロセスの背景にある課題や深層心理を紐解くことができます。分析をする際は、次のような点を意識しながら進めるとよいでしょう。

  • 対象者の意思決定プロセスを整理して可視化する
  • 意思決定プロセスに大きく影響している価値観を抽出する
  • 対象者の特性(属性やライフスタイルなど)による差異を明らかにする

定性調査を分析する際に共通する注意点は、どうしても分析者の主観が入り込みやすいということです。これを避けるには、チーム体制で分析に取り組むなどの工夫が必要です。

インサイトの発掘

インサイトとは物事の本質を表す言葉で、マーケティングにおいては人を動かす動機となるものを指します。

インサイトを発掘する上では、ターゲットへの理解を深めるために使われるフレームワークの「共感マップ」が役立ちます。インタビューなどの定性調査で得た情報をもとに、次の6つの観点からインサイトを見つけ出します。

  • Pain:悩み・ストレスを感じていることは何か
  • Gain:期待しているもの、欲しているものは何か
  • Say and Do:どんな言葉を使って説明しているか、どんな行動をとったのか
  • Think and Feel:どんなことを考えたのか、感じたのか
  • Hear:どんな声を聞いたのか、参考にしたのか
  • See:どんな点を見て選択したのか

ファインディングの整理

定性調査の結果から、どのようなファインディング(気づき・発見)があったのかをまとめます。このときに、対象者の言葉や行動、価値観など、ファインディングの根拠となる情報を合わせて整理しておくと、分析結果への納得感を醸成しやすくなります。

商品企画の失敗を避けるにはリサーチが必須

商品企画での失敗を避けるには、リサーチによって消費者のニーズや実態を的確に把握することが重要です。調査を行うことで、企画担当者だけでは思いつかないようなアイデアの糸口が見つかることも少なくありません。各調査手法の特徴を押さえつつ、有効に活用してみてはいかがでしょうか。

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