マーケティング・インタビューとは|
活用例と手法、成功のコツ
マーケティング活動では、市場や消費者についての理解を深めるための調査が欠かせません。なかでもインタビュー調査は、定量調査では把握できない消費者の深層心理やインサイトを発見できる方法として活用されるケースが増えています。
本記事では、マーケティングにおけるインタビュー調査の活用例や手法、成功のコツを紹介します。
目次 |
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マーケティングにおけるインタビュー調査の活用例
マーケティング・インタビューとは、マーケティングに必要な情報を収集するための定性調査のことをいいます。
マーケティング活動にインタビュー調査を取り入れることで、消費者の実態や深層心理を踏まえた上での効果的な展開が可能になります。どのような場面でインタビュー調査が役立つのか、活用例を見ていきます。
利用実態や意思決定プロセスの把握
インタビュー調査では、対象者との対話を通じて商品・サービスの詳細な利用実態や意思決定プロセスを確認することができます。アンケートなどの定量調査でも傾向をつかむことはできますが、個別性の高い詳細情報までを追うことは困難です。
インタビュー調査では質問を繰り返して話を掘り下げることができるため、細かな実態を捉えることができます。また、対象者本人すら気づいていない潜在ニーズやインサイトを発掘できるなど、マーケティングにおいて重要となるヒントを得ることが可能です。
プロモーションの改善
プロモーション施策の見直しや改善においても、インタビュー調査が役立ちます。具体的には、次のような活用例が挙げられます。
- 広告物のデザインや表現に対する評価を確認する
- 複数のデザイン案を提示して、もっとも興味喚起するものを調べる
- 広告物から受けるイメージを確認する
消費者の声を拾い上げることで、より効果的なプロモーション施策につなげることができます。
プロダクト・サービスの改善
インタビュー調査で得られた定性情報をプロダクトにフィードバックすることで、競争優位性のある商品・サービスへと改善することが可能です。
具体的には、実際に自社の商品・サービスを利用している人を対象に、使用感や不満・満足の内容を聞き出すという方法があります。また、競合商品の利用経験があるユーザーを対象に調査を行い、自社の強み・弱みを抽出するというやり方もあります。
ペルソナやカスタマージャーニーマップのブラッシュアップ
オンライン・オフラインを含めて、ユーザーとのタッチポイントが複雑化している今、ペルソナやカスタマージャーニーマップの精度を高めることは、マーケティングにおいて重要になっています。
インタビュー調査を行うことで、裏付けがあり、説得力を持ったペルソナやカスタマージャーニーマップを作成することができます。対象者のリアルな声を反映できるため、より良い顧客体験を設計する上でも役立ちます。
インタビュー調査の手法
インタビュー調査の手法には、1人の対象者から話を聞き出すデプスインタビューと、複数名の対象者を集めて実施するグループインタビューの2つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
デプスインタビュー
デプスインタビューは、モデレーターと対象者の1対1で進める調査です。デプス(深さ・奥行き)という言葉からわかる通り、表層的な情報にとどまらず、対象者の考えや感情、価値観といった深層的な部分を把握できるという特徴があります。
デプスインタビューは、次のような課題がある場合に適しています。
- マーケティング課題における仮説の精度を上げたい
- アイデアのヒントを得たい
- インサイトを発掘したい
- 対象者の行動実態を細かく把握したい
デプスインタビューのメリット・デメリットは、以下のように整理できます。
メリット |
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デメリット |
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昨今は、オンラインインタビューの形式が主流となりつつあります。会場手配が必要なく、対象者の居住地も制限されないというメリットがあります。また、より手軽に実施できる方法として、チャット形式のインタビューサービスも提供されています。
グループインタビュー
グループインタビューは、4〜8名程度の対象者を1グループとして、座談会のような形式で実施する調査です。モデレーターは、参加者が自由に発言できるように留意しながら進行します。
グループインタビューが適しているのは、以下のような場面です。
- 多様なアイデアを集めたい
- 対象者の特性による共通点を見つけたい
- インサイトを発掘したい
- 商品・サービスや広告物に対する評価を知りたい
グループインタビューのメリット・デメリットは、以下の通りです。
メリット |
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デメリット |
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グループインタビューでは、参加者や場の雰囲気を見ながら話題を転換したり、意見を発していない参加者に話を振ったりする必要があり、一定以上のスキルが求められます。スキルに不安がある場合は、モデレーターの研修を実施する、外部の専門家を活用するなどの対策を検討するとよいでしょう。
マーケティング・インタビューを成功に導くコツ
マーケティング・インタビューを成功させる上で、押さえておきたいコツを紹介します。
調査目的を明確にする
インタビューを実施するにあたっては、調査目的を明らかにすることがファーストステップです。次の2点を言語化しておくことで、インタビューの中で確認すべきことがブレなくなります。
- インタビュー調査によって何を明らかにしたいのか
- 調査結果を何に活用するのか
対象者の要件は具体的に
調査目的によって、どのような人を対象者とするべきなのか変わります。テーマに合わない対象者を選んでしまうアンマッチを避けるには、対象者の要件を具体的にすることがポイントです。
たとえば、利用実態を聞き出したい場合、自社商品の利用経験の有無に加え、他社商品の利用経験や利用シーン、ライフスタイルなどを絞り込んだほうが、より的確に欲しい情報を得られる場合があります。
要件を決める際は、以下の点を意識して調査テーマについてしっかり話を聞き出せるかどうかを見極めます。
- 属性(性別・年齢・居住地・家族構成・職業 など)
- テーマへの関与度(利用経験、興味関心の度合い など)
- 行動実態(○○の行動をとった経験がある、○○の際に利用した経験がある など)
インタビューフローを作成する
インタビューフローとは、質問項目や各質問にかける時間、話を聞く順番などをまとめたシナリオのことをいいます。インタビュー当日の進行をスムーズにするために作成します。
ただし、インタビュー調査では対象者の発言や反応を見ながら臨機応変に質問を変えたり、話を掘り下げたりすることが重要になります。事前に質問項目を細かくしすぎると、本番で一問一答のような形式的なやり取りになってしまい、深層的な情報を引き出せなくなる場合があるので注意しましょう。
また、実際にインタビューを開始してみると、質問の仕方や順番を変えたほうが意見を引き出しやすいことがあります。この場合は、フローを見直すなどしてブラッシュアップしていきます。
対話によって本音を引き出す
インタビュー調査は、対象者との対話によって情報を得る手法です。仮説を検証したい気持ちが先立って、自分が聞きたい答えへと誘導してしまわないように注意しましょう。
また、回答内容によってモデレーターのリアクションや反応が変わると、対象者はより好意的なリアクションを得られるように答えようとする意識が働きます。バイアスを避けるには、どのような意見に対してもニュートラルに反応するように心がけることがポイントです。
掘り下げるポイントを決めておく
インタビュー中に、どのように話を掘り下げていけばいいのか迷うこともあるでしょう。これを避けるには、あらかじめ確認したいポイントを決めてからインタビューに臨むことをおすすめします。
以下の観点を参考に、整理するとよいでしょう。
- 行動の背景にある動機や課題
- 影響を受けた事柄(見たこと・聞いたこと・経験したこと)
- 選択における価値観
- 満足度が高まる瞬間や場面 など
インタビュー調査はマーケティングの精度を高めるための貴重な情報源
マーケティング活動では、企画や施策の検討、効果検証などの様々な場面でデータが必要となります。対象者からリアルな声を集めるインタビュー調査では、自社が想定していなかった課題・ニーズやアイデアが見つかることもあります。マーケティングの精度を高めるための情報収集手段として活用してみてはいかがでしょうか。