デプスインタビューの費用相場は?|
実施形態の種類・謝礼の目安を解説
1対1で行うデプスインタビューは、実態や意思決定プロセスなどの聴取を通じてインサイトを発掘する調査手法です。コモディティ化が進み差別化が難しくなっている今、様々なジャンルの商品開発やマーケティングの現場でデプスインタビューのニーズが高まっています。
そこで今回は、デプスインタビュー実施の流れや特徴、費用などをわかりやすくまとめました。
デプスインタビュー実施の流れ
まずはデプスインタビューを行うときの流れを5つのステップに分けて見ていきます。
1.調査目的・全体計画の策定
はじめに、調査目的と全体計画を具体的に決めます。
調査目的を明確にすることで、対象者の選定時や質問項目の設計段階でのズレを防ぐことができます。以下の点を具体的に決めます。
<調査目的>
- 調査によって解決したい課題は何か
- 調査で明らかにしたいことは何か
- 調査結果を何に活用するのか
関係者間の目線を合わせてスムーズに進行できるよう、全体計画の策定では以下のことを具体的にします。
<全体計画>
- 調査スケジュール(準備→実施→分析・レポート)
- 対象者の人数
- インタビュー時間
- 予算
- 実施形態(オフライン・オンライン、チャット形式)
対象者の人数は、1テーマにつき10名程度が目安となります。これは、10名を超えると似通った意見が多くなっていくという調査結果があるためです。インタビュー時間は60~90分が一般的ですが、テーマによって120分程度行うこともあります。このほか、予算と実施形態も決めておきます。
2.対象者のスクリーニング
次にどのような人を対象者とするか、要件を定めてスクリーニングをします。年齢・性別・家族構成といった属性情報だけでなく、調査テーマについてしっかりヒアリングできるかという観点で、スクリーニングの基準を決めることがアンマッチを避けるポイントです。
たとえば「○○を使っている」「○○への興味関心が強い」など、調査テーマについての関与度が高いかどうかをチェックできるようにします。
3.インタビューフロー・質問項目の作成
インタビューフローとは、質問項目と時間配分、聞く順番、確認事項などを定めた台本のことをいいます。この台本に沿ってインタビューを進めるため、綿密に作成する必要があります。
ただし、デプスインタビューは対象者の発言や反応に対し、臨機応変に質問を追加・変更しながら掘り下げていく手法であり、対話を重視します。設計段階で質問を細かく設定すると、一問一答の形式的な調査になってしまったり、対象者の自由な思考を狭めてしまったりするため注意しましょう。
質問項目を作成するときは「必ず確認すべきこと」にポイントを置いて、インタビューで掘り下げるべきことは別途メモしておくと便利です。
また、インサイトを発掘するためには、対象者の行動の背景にある動機・感情・価値観などに着目することが重要になります。これらを引き出せる質問構成になっているかを確認します。
4.インタビュー実施
インタビューに際しては、対象者が本音を話しやすい雰囲気を作ることが大切です。冒頭の自己紹介やアイスブレイクなどで、緊張感をほぐすよう工夫します。
また、対象者は「間違ったことをいってしまうのでは……」という不安を持っていることが多いものです。正解・不正解はないことを伝えるなどして、自由な発言を引き出すようにしましょう。
5.分析・レポート
インタビュー調査をまとめて、分析・レポートします。デプスインタビューの分析方法やまとめ方に決まった形式はないため、調査目的に応じて最適なアウトプットを検討します。
分析では、対象者から得た情報を整理し、どのようなファインディング(発見・気づき)があったのかを明らかにするように進めます。レポート作成では、誰に向けての報告書か、何に活用するのかを念頭において、わかりやすく整理するのがポイントです。
デプスインタビューの形態と特徴
デプスインタビューの実施形態には、直接対面するオフラインでのインタビュー、オンライン、チャット形式があります。それぞれの特徴を見ていきます。
対面インタビュー(オフライン)
対象者と直接的に対面するオフラインの実施形態です。メリットとして挙げられるのは、言葉以外の非言語情報(表情、視線、姿勢、リアクションなど)をつかみやすいことです。また、その場で商品を手に取ってもらい、意見・感想を収集したい場合は、オフラインの調査が適しています。
一方で、オフラインのインタビューでは会場を手配する必要があります。対象者の交通アクセスに配慮しなければならないため、居住地が限定されるというデメリットがあります。
オンラインインタビュー
オンライン会議システムなどを使ってインタビューする形態です。大きなメリットは、場所の制約を受けないことです。オフラインの場合は居住エリアが限定されますが、オンラインインタビューでは地方在住者も含めた全国に対象を広げることができます。
とくに、スクリーニングで抽出する対象者を少数派に絞り込んでいるときなどは、居住地を広げることで対象者を見つけやすくなります。また、会場手配の必要がないため、スケジュール調整が容易、コストを削減できるというメリットもあります。
デメリットは、通信環境や通信機器の影響を受けることです。リテラシーが低い層を対象者とするときは、事前にレクチャーするなどの配慮も必要です。
チャットインタビュー
昨今、注目度が高まっているのがチャット形式のデプスインタビューです。オンラインと同様に、場所の制約を受けません。くわえて、テキストとして残るため、音声データの文字起こしや議事録が不要という利点があります。
チャットでは画像を添付することもできるので、インタビューする側は画像を提示して印象や感想をもらうことが可能です。また、対象者側から画像を提供してもらうという方法もあります。生活者の実態を画像として記録できるなど、商品開発やマーケティングに役立てることが可能です。
現在は年代を問わず普段からチャットに慣れ親しんでいる人が多いため、気軽に参加してもらいやすく、短期間で多くの声を集めやすいというメリットがあります。かつチャットであれば率直な意見をいいやすいという声もあり、インサイトの発掘に役立ちます。
一方で、実際の表情やリアクションは見えない点がデメリットです。
デプスインタビューにかかる費用
デプスインタビューは外部に委託する方法と社内で実施する方法があり、費用感が大きく変わります。チャットインタビューの場合も合わせて、それぞれの相場を見ていきます。
外部に委託する場合の相場
外部に委託する場合、テーマや依頼内容によって費用感が変わります。内訳の例を以下に挙げます。
- 調査企画・設計・ディレクション
- 対象者のスクリーニング(スクリーニング用のアンケート作成)
- 実施(当日の準備、モデレーター手配、記録)
- モニタへの謝礼
- レポーティング
調査会社によって料金体系は異なりますが、依頼内容、モニタ数、質問数、時間などで費用が変わる場合が多くなっています。モニタ数6名で20万円~が基本料金の目安ですが、実際に調査を委託するにあたっては様々なオプションが必要となるため、ここにオプション費用が加算されていくことになります。
社内で実施する場合の相場
社内で実施する場合は、会場費とモニタへの謝礼が主なコストとなります。謝礼の相場は、60分8,000円から1万2,000円程度です。ただし、モニタが専門職やエグゼクティブ層など特殊なケースでは、これよりも多く支払うことが多くなっています。
チャットインタビューの場合の相場
チャットインタビューのサービスは、月額制が多くなっています。調査回数や人数に応じて費用が変動するサービスでは、月額5万円から提供されています。
セルフ型のチャットインタビューサービス「Sprint」は、回数制限がない定額プランを月額19万8,000円で提供しています。年間を通じて、デプスインタビューを高頻度で実施したい場合におすすめのプランです。
商品開発・マーケティング・顧客体験の向上に活かそう
デプスインタビューは、対象者の生活実態や購買行動といった表層的な情報収集にとどまらず、その根底にあるインサイトに着目した調査方法です。費用は実施形態や方法によって大きく変わります。
昨今は、手間とコストを抑えた調査が可能なチャットインタビューも注目されています。商品開発やマーケティング、顧客体験の向上など様々な場面に役立ててみてはいかがでしょうか。