カスタマージャーニーマップの作り方|
失敗に終わらせないためのポイント
顧客とのタッチポイントが多様化している今、カスタマージャーニーを精度高く設計することはマーケティング活動の成果を高める上で必須となりつつあります。
本記事では、カスタマージャーニーマップの作り方を6ステップに分けてわかりやすく整理しました。失敗を避けるために留意しておきたいポイントも解説します。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、顧客の購買行動におけるプロセスを表したものです。「認知→興味・関心→比較検討→購入→利用→再購入」といった購買行動を時系列に並べ、それぞれのフェーズにおける顧客の特徴的な行動や思考・感情を図式化して視覚的にわかりやすくしたものをカスタマージャーニーマップといいます。
商品・サービスの機能性や利便性を訴求するだけでは差別化が難しくなっている今、顧客への提供価値として、各タッチポイントにおける顧客体験の向上がより重視されるようになりました。しかし、顧客の購買行動はオンライン・オフラインを含めた複数のチャネルを横断して情報を収集するなど、多様化・複雑化しているのが現状です。
顧客理解を深め、顧客を起点とした発想が求められている中で、カスタマージャーニーマップは商品の企画・開発やマーケティング活動の多くの場面に用いられています。
カスタマージャーニーマップの作り方
カスタマージャーニーマップの作り方を6つのステップに分けて見ていきます。
1.ペルソナを作成
まずはカスタマージャーニーの対象とする顧客のペルソナを作成します。ペルソナとは、ターゲットとなる人物像を象徴するような特徴を設定して、まるで実在する人物であるかのように作り上げたモデルのことです。ペルソナを作成することで、顧客の購買行動や各タッチポイントにおける思考・感情などをより具体的にイメージしやすくなります。
ペルソナの作成に必要となる要素には、次のものがあります。BtoCとBtoBでは異なるため、以下の例を参考にしてください。
●BtoCのペルソナ例
- 基本情報(年齢・性別・居住地・職業・収入・家族構成など)
- 興味・関心があること
- ライフスタイルや余暇の過ごし方
- よく利用するメディアや情報収集の手段
- 価値観や大事にしていること
- など
●BtoBのペルソナ例
- 基本情報(業界・従業員規模、担当者の所属部署・役職など)
- 事業や組織の目標・課題
- 担当者のリテラシー
- 決裁ルート
- など
どのような要素を盛り込むかは、カスタマージャーニーマップの目的・用途によって変わります。自社にとって何が明確になると精度の高いマップを作成しやすくなるのかを考えて、要素を検討しましょう。
また、カスタマージャーニーマップは1枚につき1人のペルソナを設定するのが基本です。これは、カスタマージャーニーマップでは、具体的かつリアリティのある情報で構成することが重要になるためです。複数のターゲット像を対象にしたい場合は、それぞれにペルソナを作成してマップも複数枚作ります。
2.フレームを作成
次に、カスタマージャーニーマップの骨格となるフレームを作成します。横軸と縦軸には、主に次のような項目を設定します。
●横軸
横軸には「商品・サービスの認知→興味・関心→比較検討→購入→利用→再購入」のように、購買プロセスを時系列で並べます。これ以外にも、自社の商品・サービス提供の形態に合わせて項目を追加したり、細分化したりするなどして整理します。
●縦軸
縦軸の項目は、カスタマージャーニーマップの目的・用途に応じて検討します。多く用いられているのは、次の項目です。
- タッチポイント:顧客接点となるメディアやコンテンツ、場所など
- 行動:顧客が実際にとる行動
- 思考:その行動をとった際に顧客が考えていること
- 感情:その行動をとった際に顧客が感じていること
- 自社の課題:タッチポイントにおける自社の課題
- 施策の方向性:タッチポイントにおいて改善すべきことや施策の方向性
3.タッチポイントの洗い出し
タッチポイントとは、顧客が購買行動をする際に利用するメディアやコンテンツ、場所のことをいいます。「認知→興味・関心→比較検討→購入→利用→再購入」の各フェーズにおいて、どのような手段によって自社と接点を持つのかを整理していきます。
オンラインではGoogle検索やHP、口コミサイト、SNSなどがあります。オフラインでは店舗や展示会、友人の紹介などがあるでしょう。メディア名を挙げるなどして、できるだけ具体的にしていくことがポイントです。
たとえば、SNSの中でもよく利用するものがFacebookなのかInstagramなのかによっても、施策の方向性が変わってきます。ペルソナの特性を踏まえながら洗い出していきます。
4.顧客の行動・思考・感情を整理
横軸に設定したフェーズごとに、顧客がどのような行動をとり、何を考え、どんな感情を持ったのかを整理します。
具体的には、まず想定される行動を時系列に沿って洗い出し、関係者で意見を出し合いながら進めるとスムーズです。次にその行動をとったときの思考・感情を整理していきます。いずれの作業においても、ペルソナの視点に立って考えていくことが重要です。
5.各フェーズにおける課題と施策の方向性を整理
顧客とのタッチポイントや行動・思考・感情を整理したら、これらの情報をもとに現状の自社の課題や改善すべきこと、新たに検討すべき施策の方向性などをまとめていきます。ペルソナの立場になって、不安や不満を感じること、満足度が上がる体験などを具体的にしながら検討するとよいでしょう。
6.マップを完成させる
最後に、カスタマージャーニーマップとして仕上げます。マップに決まった形式はありませんが、誰が見ても一目で理解できるように作成することが重要です。たとえば感情の変化をグラフにしたり、イラストで表現したりして視覚的にわかりやすくするのも良い方法です。
カスタマージャーニーを失敗に終わらせないためのポイント
カスタマージャーニーマップは商品企画・開発やマーケティング活動の様々な場面で役立ちますが、一方で「せっかく作成したのに活用できない」という失敗例も少なくありません。失敗を避けるには、どのような点に留意すべきなのかを見ていきます。
リアリティのある情報を収集する
活用度の高いカスタマージャーニーマップを作成する上で重要となるものが、ベースとなる顧客情報です。企業側の想像で作成してしまわないよう、顧客のリアルな情報を集めることが実態との乖離がないマップを作成するポイントです。
情報収集の方法には、定性調査・定量調査があります。
●定性調査
- デプスインタビュー(対象者とモデレーターの1対1で行うインタビュー調査)
- グループインタビュー(複数名の対象者を集めて行うインタビュー調査)
●定量調査
- アンケート調査
- 購買履歴データ
- アクセス解析
ペルソナの精度を高めたい場合も、これらの調査を活用して情報を集めることをおすすめします。
他部署と連携しながら作成する
顧客と接点を持つ場面では、マーケティング部門・営業部門・カスタマーサポート部門など、複数の部署が関わることが多くなります。そのため、解像度の高いカスタマージャーニーマップを作るには、他部署と連携して多様な意見を出し合いながら作成することがポイントです。
また、他部署と協業することで関係者間での共通認識が醸成され、施策の検討・実行においてもスムーズに進めやすいというメリットも得られます。
「自社にとって好都合」とならないように注意
顧客視点で考えることが重要と認識していても、「こんな課題があるはず」「こんな行動をとるはず」など、どうしても企業側にとって都合のよい解釈になってしまうことがあります。こうした失敗を避けるには、チーム体制で取り組み客観性を担保するなどの工夫が必要です。また、インタビュー調査などを実施して仮説検証を行うこともおすすめの方法です。
「一度作ったら終わり」にせず常に見直す
購買行動は常に変化を続けるものであり、カスタマージャーニーマップを作成した半年後、一年後には実態と乖離してしまうことも想定されます。一度作ったら終わりにせず、定期的に見直して最新の状態にブラッシュアップし、活用度の高いカスタマージャーニーマップを作りましょう。
解像度の高いカスタマージャーニーマップで顧客体験の向上を
カスタマージャーニーマップは、多様化・複雑化している顧客の購買行動を理解する上で、より重要性を増しています。顧客体験の向上が業績を左右するといわれる今、必須の取り組みとなりつつあります。ぜひ本記事を参考に、解像度の高いカスタマージャーニーマップの作成に役立ててください。